はじめに
「10バガー振返り」は、過去に10倍以上に成長した銘柄の時代背景やビジネスモデルから成功要因を分解し、またどのような決算を出してどのように株価は動いたかを解析することで、現在の成長株投資に生かすための学びを抽出していくものです。
第一回目は少し古い10バガー達成銘柄ですが、GMOペイメントゲートウェイを記事にしたいと思います。GMOペイメントゲートウェイの10バガー達成要因は、現在の成長株投資に多くの気づきを得ることができると考えているためです。それでは記事本文に入ります。
結論
はじめにGMOペイメントゲートウェイ社(以下GMO-PG)が10バガー以上の成長を遂げることができた結論と、そこから得ることのできる学びをまとめます。
- 売上と利益の持続的な成長:GMO-PGの例では、売上と営業利益が一貫して増加し続けたことが、株価の上昇を支えました。企業の収益性が高まれば、その企業の株価も通常上昇します。したがって、投資対象となる企業の選定時には、その企業の長期的な収益成長の見通しを評価することが重要です。
- 市場の期待:GMO-PGのPERも増加しました。これは、市場がGMO-PGの将来の成長を強く期待し、その期待が株価に反映されたことを示しています。したがって、投資対象となる企業の選定時には、市場の期待(P/E比などのバリュエーション指標)も考慮することが重要です。
- 業界の成長と企業の地位:GMO-PGは、急速に成長したインターネット決済業界のリーダーであり、その地位を利用して大きな利益を上げました。したがって、成長産業のリーダー企業を探すことも、成功する投資戦略の一部となり得ます。
- 耐性と長期的な視点:GMO-PGの株価は一貫して上昇し続けたわけではなく、途中で何度も下落しました(2014年バーナンキショック、2016年チャイナショックなど)。しかし、長期的な視点を持ち、一時的な市場の動きに動じずに投資を続けた投資家は、結果的に大きなリターンを得ることができました。
- 業績予測の正確さ:期初に出した業績予測を、上にも下にもブラさずに正確に着地させる安定性があります。(±5%程度) これは、ほかのいくつかの成長株(SHIFT、エムスリー)にも共通してみられる傾向です。
GMO-PG社の紹介: 事業と操業の始まり
GMO-PG(GMOペイメントゲートウェイ)は、日本の先駆的なインターネット金融サービス企業で、1995年にGMOインターネットとして設立されました。GMOインターネットグループの一員として、GMO-PGは、企業がオンラインで決済を行うためのソリューションを提供し、その事業は、小規模な商店から大規模なオンラインビジネスまで、さまざまな規模のクライアントに対応しています。
GMO-PGの主力事業は、インターネット決済、クレジットカード決済、キャリア決済などの各種決済サービスです。また、電子マネーやポイント、プリペイドカードといった決済関連サービスや、請求書発行、債権管理などのアウトソーシングサービスも手がけています。
GMO-PGは、オンライン決済市場の成長とともに、そのサービスの需要が増加するという独自のポジショニングを選択しました。これにより、同社はインターネットビジネスの成長とともに、そのビジネスも拡大しました。その初期段階から、GMO-PGは革新的な技術と高度なセキュリティを用いて、企業が安全に、そして効率的に決済を行えるような環境を提供してきました。
急成長の背景
初期の段階から、GMO-PGは高度なセキュリティと使いやすさを重視したサービスを提供してきました。同社は、個人情報の保護と不正利用の防止を最優先事項として扱い、これが同社の信頼性と評価を高める重要な要素となりました。
GMO-PGの事業の始まりは、インターネットがまだ新しく、そしてオンラインビジネスの可能性が無限大に広がっていた時代にさかのぼります。その潜在能力を見抜き、革新的なサービスを提供し続けることで、GMO-PGはその地位を築き上げ、インターネット決済市場のリーダーとなったのです。
このように、GMO-PGの初期の歩みから、同社のビジョンと決意が明確に見えてきます。それは、インターネットの可能性を最大限に活用し、ビジネスに新たな価値を提供すること。そして、そのビジョンは今日も変わることなく、GMO-PGがその事業を続けていく原動力となっています。
株価推移
それでは株価の推移をみていきましょう。
GMO-PGは2005年4月4日にマザーズに上場しました。公募価格80万円に対し、450万円(分割調整後1,406円)の初値をつけました。その後、リーマンショックを経て2008年10月に62,400円(分割調整後78円)の上場来安値を付けました。 その後上昇基調に入り、2013年のアベノミクス相場で株価の上昇は加速し、上場来高値を更新していきました。 2014年と2016年には50%近い調整が入りましたが、いずれもその前の高値を更新し続け、2021年11月に上場来高値である16,680円(分割調整前5,340万円)を付けています。
高値日付 | ピーク株価 | 底値からの上昇率 | 安値日付 | ボトム株価 | 高値からの下落率 |
---|---|---|---|---|---|
2011/10/13 | 491 | – | 2012/10/15 | 306 | -37.7% |
2014/3/12 | 1510 | 393% | 2014/5/19 | 768 | -49.1% |
2016/4/11 | 4040 | 426% | 2016/12/9 | 1905 | -52.8% |
2018/10/2 | 7790 | 309% | 2018/12/26 | 4370 | -43.9% |
2019/4/24 | 9080 | 108% | 2020/3/13 | 5640 | -37.9% |
2021/11/22 | 16680 | 196% | 2022/6/20 | 8150 | -51.1% |
次にヒストリカルPERを見ていきましょう。低迷期には10倍台のPERでしたが、徐々に30倍程度のPERをつけ、成長期には150倍ものPERを付けるタイミングがありました。2023年7月現在は60倍程度で推移しているようです。
決算推移
続いて決算推移です。株価が上昇傾向を示し始めた2010年以降を解析の対象期間にしたいと思います。
- 売上成長:2010年から2016年の間に、GMO-PGの売上は3,146百万円から12,114百万円に増加しました。これはその期間で約3.85倍の成長を達成したことを示しています。また、年間の売上成長率は123.5%から134.1%の間で一貫して高い成長を維持していました。
- 営業利益成長:同じ期間中、GMO-PGの営業利益は1,170百万円から3,820百万円へと大幅に増加しました。これは約3.27倍の成長を達成したことを示しています。また、営業利益率(売上に対する営業利益の比率)は37.2%から31.5%へと若干減少しましたが、それでも一貫して高い水準を維持していました。
- 株価の推移:2010年から2016年の間に、GMO-PGの株価は217円から2,630円に上昇しました。これはその期間で約12.1倍の成長を達成したことを示しています。
GMO-PGがこの期間に強力な成長を達成したことが明らかになります。売上、営業利益、そして株価の全てが大幅に増加し、それぞれが企業の強さと成功を反映しています。特に、高い売上成長率と営業利益率は、GMO-PGのビジネスモデルの効率性と収益性を示しています。また、この期間の株価の大幅な上昇は、市場がGMO-PGの成長性と将来性を高く評価したことを示しています。
以下10バガー達成までの各指標の推移です。実はEPSの成長と同じくらいPERの成長(その会社の未来の成長に対する期待感)も大事なことがわかります。
EPS 8.6円(2010年9月決算)→25.0円(2015年9月決算) 2.9倍
PER 19.7(2010年9月決算)→58.7(2015年9月決算) 2.98倍
株価 217円(2010年9月決算発表日)→2300円(2015年9月決算)
10バガー後とその他雑感
GMO-PGは10バガー達成後も株価を伸ばし続け、2016年4月11日に直近の高値4040円をつけたのち、同年12月に1,905円(下落率52.8%)まで調整します。そこから再度上昇に転じ、2021年11月に16,680円の上場来高値をつけ、2023年7月時点は9,000円から12,000円のボックス相場でもみ合っている状況です。10バガー達成後、安値から再度8倍もの上昇を見せたのは驚異的です。これは10バガーセカンダリーとして新規に銘柄発掘するよりよい事例になると考えています。他にセカンダリー10バガーの銘柄があればぜひ教えてください。
もう1つこの会社の特筆する点として、売上の期初予想において結果が予想を大きく外していないことがわかります。
参考:GMOペイメントゲートウェイの業績予想の履歴 – 3769 / tp / 情報・通信業 | バフェット・コード (buffett-code.com)
一般的に上方修正する銘柄は、成長銘柄として買いが集まることが多くあります。しかしGMO-PGのような本当の成長株は上方修正など出さずに20%程度の売上成長を淡々と積み重ねるものなのかもしれません。
この傾向はSHIFTやエムスリーにもみることができ、業績管理の精度の高さが企業統治の高さを表し、高い成長を長年続けるための大事な要素になっているのだと思います。
今後の投資に生かすための学び
2023年以降、以下のような市場がGMO-PGが成功したインターネット決済と同じように急速に成長し、その結果として大きな投資機会を提供する可能性があります:
- 人工知能(AI)と機械学習:これらのテクノロジーは、様々な産業において新しいビジネスモデルを生み出し、既存のビジネスプロセスを劇的に改善する可能性があります。
- 再生可能エネルギーとEV:気候変動への対策として、再生可能エネルギーや電動車両の需要は今後数十年間で大幅に増加すると予想されています。
- バイオテクノロジー:これらの分野では、遺伝子編集や個別化医療などの新技術が革新的な治療法を生み出し、医療産業を大きく変革する可能性があります。
- フィンテック:デジタル通貨(仮想通貨)やブロックチェーン技術、ロボアドバイザーなどの新技術が金融業界を大きく変革する可能性があります。
このあたりの銘柄から次のGMO-PGのような成長性を見せる銘柄が現れるのかもしれません。
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